久遠の空 ドリーム小説 一話もの 卍巴と降る雪の

一話もの 卍巴と降る雪の



 新しい年が明け、新選組の屯所である前川邸および八木邸は、大掃除で清められた空間の中、清浄な空気を内包していた。
 「今年もよろしくお願いします」
 と山口は畳の上に手をつき、火鉢を横に置き腕を組んで正座をする土方歳三に挨拶した。
 「ああ」
 土方も頷く。

 「いつから黒谷だ」
 土方が問う。
 「明日からです」
 金戒光明寺、通称“黒谷”での英語の習得は順調に進んでおり、たちが作った辞書は宿坊に眠っているものの、新たな辞書を書き写す作業が まだまだ続けられていた。
 正月の休みは一日だけ。翌日の二日からは誰もが通常の日常生活を送り出す。もまた、黒谷に通う日々が始まるのだ。


 土方は衣桁に目をやった。大晦日に火熨斗をかけたの羽織が掛かっている。漆黒の布地は丁寧にかけられた火熨斗のおかげで ぴしりと伸びており、明日からの勤務を待っていた。
 その背の中央と両肩、そしてこちらからは見えないが前には紋が入っている。捻じ卍の丸という、白く塗りつぶした円に線を入れて卍を描いたものだ。
 土方はそれを見て、彼女がこの羽織を誂えてきたときのことを思い出した――――――





 が黒谷に出仕することが決まった頃のことだった。
 それまで自分用の黒い羽織を持っていなかったは、使う用事があれば八木家の当主源之助に借りて済ませていた。が、下級ながらも 会津藩士として登用され、黒谷に毎日赴くとなれば、それなりの服装をする必要に迫られた。
 幸い、着物や袴はこちらの時代に飛ばされてから買い求めた物で事足りたが、黒の羽織だけはどうにもならなかった。なのである日、 非番であった斉藤と共に羽織を買いに行ったのである。

 二人はまず古着屋を見て回った。
 何件か覗いたのだが、生憎どの店にも黒い羽織は置いていなかった。着る物はたくさん置いてあったが、黒の羽織となれば正装である。 誰も簡単に手放すわけもないだろう。
 そこで斉藤は、仕立てたほうが高いことはわかっていたが、呉服屋に行くことを提案した。


 「いかがいたしまっか」
 呉服屋の店の者は愛想笑いを浮かべて算盤を見せた。
 だがには算盤がはじき出している金額が幾らだかわからない。まだこの時のは算盤の見方を理解していなかったからだ。
 斉藤をそっと見遣ると、斉藤は金額を耳打ちしてくれた。
 「…」
 その値段を聞いて、は口を噤んだ。
 会津藩から多少の支度金は出ていたものの、それは大小の刀を揃えるためのもので、には金がなかった。
 仕方がないので斉藤から金を借りることにしたのだが、あまり高額では困る。
 真面目に勤めていれば会津藩から毎月俸禄が出るが、自分が消えるまでに払い終えることができないような金額では困るのだ。 池が光るのは五年ぐらいの周期であると聞いていても、もし突発的に光って帰るような事態になれば返済できない。は それは避けたいと思っていた。


 「やはりもう少し古着屋さんを回って探したほうがいいでしょうか」
 「それでもいいが…あるとは限らんぞ」
 この呉服屋に来るまでにめぼしい古着屋には寄ってきた。後はもう少し遠くまで足を運ぶしかない。が、斉藤の言う通り、あるとは限らない。 ここで高くついても作ってしまったほうが早いかもしれなかった。

 「…」
 は断ることも頼むことも出来ずに迷い、顔を上げて店の中へと目を泳がせた。
 色とりどりの反物が棚に入れられ、店の者が客にあれこれと見せている。そしてどんなものを作ろうかと細かに相談している。
 壁際には大きな黒塗りの衣桁が置いてあり、大きな黒い羽織が掛けられていた。
 いや、大きいなどというものではない。巨大だ。相撲取りでもまだ大きいような、人が着るのかどうかも怪しい大きさだった。
 「うわ…」
 それを見て思わずは声を出してしまった。
 「あ、あれは商家の旦那はんのご注文ですわ」
 店の者はの視線が巨大な羽織に向けられているのに気がついて言った。
 「さる大店の旦那はんが、飾るためだけにお作りにならはったんどす。自分とこのお客はんに見せるんやて」
 「へえ…」
 自分の身の丈に合った羽織を誂えるだけでも値が張る様子なのに、あれだけのものを作るとは一体どのぐらいの金額が必要なのだろう。 しかも着るのではなく見せるためだけに作るとは、ただの道楽である。余程の金持ちなのではないだろうかとは呆然とした。
 「先ほど仕上がったんどすが、これからお届けに行くところでして」
 店の者は、大きいから大変やったんですけどな、と苦笑いをした。
 「だろうな」
 斉藤も軽く頷いた。

 「で、いかがでっしゃろ」
 と店の者が再びに羽織作成の有無を伺った。
 「すみません、出直してきます」
 は巨大な羽織から視線を外して言った。何とかもう少し手の届く範囲のものを探そうと思ったので、今日は断って帰ることにした。
 「ほな、またよろしゅう」
 店の者は愛想よく笑うと、丁寧に頭を下げた。

 二人は店から出て、もと来た道を歩き出した。
 「あせることはない。金がたまるか、納得できる物が見つかるまで八木さんのものを借りていればいい」
 「はい」
 は素直に頷いた。
 ただでさえ身の回りの物を斉藤や土方に揃えてもらったのに、さらに金を借りるなどは気が進まなかった。
 無論、黒谷に出仕するからにはきちんと支度をせねばならない。それはわかっているのだが、いつ自分が消えるかもわからないのに高い金額を出して 羽織を作る必要があるのかも疑問だった。“”は斉藤の元を訪ねる際に黒い羽織を持って来なかったようだが、実家に帰ればあるはずだと斉藤は言った。 つまり、自分が消えてしまったらその羽織を着る者はいないのである。


 何とか見つかればいいが、とが肩を落としたその時。
 急に後ろからどんとぶつかられ、は膝をついた。
 「大丈夫か」
 斉藤が手を差し伸べて、を起こした。
 「ひったくりや! 誰か捕まえて!」
 悲鳴のような声が往来に響いた。
 ははっとして顔を上げた。自分にぶつかったと思しき男が、大きな風呂敷包みを抱えてさっと横道に走っていくのが見えた。
 と同時に斉藤が地を蹴って走り出した。大きな動きはしていないが、斉藤の足は速かった。 ひったくりに続いて路地を曲がったと思ったら、すぐにかの人物の首根っこをひっ掴んでこちらへ引き摺ってきた。

 「…お見事です」
 普段の静かな佇まいからは想像できないような素早さに、はただ感心した。
 「うむ」
 斉藤はひったくりの手を懐の手拭いを使って縛り上げた。
 「ああ、ありがとうさんどす! 助かりました!」
 ひったくられた男が斉藤に駆け寄った。
 「あ」
 はその男を見て目を丸くした。
 「あ、さっきのお客はんやないどすか!」
 なんとその男は、先ほどの呉服屋でたちの応対をした店員だった。

 「ちょうど手が空いたので、私がお届けすることになりまして」
 その店員は、たちが帰ったところで店の主から巨大な羽織の配達を頼まれ、風呂敷に包んだそれを持って店を出た。
 が、そこへひったくりが現れて荷物を攫われてしまったのだ。
 「もし高級な仕立物だったら、売りさばいて金にするつもりだった」
 と、奉行所の役人が来るのを待つ間、ひったくりは言った。


 「何とお礼を申し上げてええやら」
 役人にひったくりを引き渡した後、と斉藤は呉服屋の中へと連れて行かれ、店主から挨拶を受けた。
 「あれだけの大きなお品を盗られてしもたら、うちも大損害どした。ほんまに感謝ですわ」
 店主は斉藤たちの前で手を合わせて重ねて礼を述べた。
 「いや、たいしたことでは」
 斉藤が普段とまったく変わらぬ表情で言う。
 「後ほどお礼をお届けしたいよってに、どこのどなたさんかお教えいただけますやろか」
 店主は頭を上げてにこやかに言った。
 「それほどのことは」
 「いえいえ、是非に」
 斉藤は断ったが、店主がどうしても食い下がるので、
 「壬生浪士組副長助勤、斉藤一」
 と名乗った。

 「み、壬生浪?」
 店主の顔色が変わった。壬生浪士組と言えば芹沢鴨を筆頭とする荒くれの集団で、市中巡察を行ってはいるものの、強奪まがいの活動資金の 取立てで町中を荒らし回ってもいると評判のアレではないかと。
 「そそ、そうとは知らず失礼いたしました! 何でもお言いつけどおりのものをお届けしますので、どうぞご遠慮なさらずにおっしゃって下さい!」
 店主は畳にべったりと額をつけ、“だから乱暴狼藉だけは勘弁して欲しい”と言わんばかりの低い姿勢で斉藤に頼んだ。
 「ご主人、我々は…」
 おそらく芹沢たちと同列に扱われているのだろうと察し、斉藤は否定しようとした。
 が。
 「…それならば、羽織をひとつ所望したい」
 一瞬思案した後、斉藤は小さな口の端を僅かに上げてそう言った。

 こうしての羽織は誂えられることとなった。
 当の本人は何もしていない上に、芹沢の威光を振りかざしたようで戸惑いを隠せない。
 「あ、あの、斉藤さん…」
 採寸が終わり、店の者がそれを書き付けている隙にはこそりと斉藤に話しかけた。
 「いいんですか、こんなの」
 「気にするな。頼んだのは俺だ」
 全く気にかける様子もなく斉藤は、出された茶を啜っている。
 それはそうなんだけど、とはため息をひとつついた。

 「山口様、家紋はいかがいたしましょう」
 店の者がに聞いてきた。
 「お前、自分の家紋は何だか知っているか?」
 「…家紋、ですか?」
 「そうだ」
 斉藤に言われ、は頭の中の記憶を攫った。お彼岸の時期には必ず墓参りに行っていたのだが、墓石にあったはずの家紋が 何であったのかがちっとも思い出せない。他に家紋を意識するような生活でもなかったため、は自分の家の家紋が何であるのか覚えていなかった。
 「…すみません、わかりません」
 「そうか。すまんが、紋帳を見せてもらえるか」
 「へえ」
 の返事を聞くと、斉藤は店の者に一冊の帳面を所望した。
 斉藤は店の者が出してきたそれを開くとに渡した。
 「ここから好きな紋を選ぶがいい」
 それは紋帳と呼ばれる、家紋が描かれた帳面だった。鯨尺で八寸、つまり3センチ四方の枠の中にひとつずつ家紋が描かれ、一頁の和紙に 十五ほどの家紋がびっしりと掲載されていた。それが何十頁、何百頁となり分厚い一冊の帳面にまとめられていた。
 「すごい…」
 は思わず深いため息を漏らした。客に家紋を指定してもらうための実用書だが、もはやそれを超えて芸術作品だとしか思えない。 コンピューターなど当然ない時代に、寸分のブレもなく模様が描かれている。店の者に聞いてみれば、真っ直ぐな定規と分廻しという、 いわゆるコンパスだけを使って作図するのだそうだ。

 「…どれにしようか迷います」
 しばらく頁を繰った後に紋帳から目を離し、は困ったように眉を寄せた。
 「どんなのか希望はないのか」
 斉藤がの膝の上に置かれた紋帳を手に取り、ぱらぱらとめくった。
 「あまり目立たないものがいいです」
 出来る限り地味に、目立たず。それがの行動や服装の基本だった。
 (時に思いっきり目立ってるがな…)
 と斉藤は心の中で思ったが、それを口にするほど野暮ではなかった。

 斉藤は紋帳に目を通しているうちに、あるひとつの図案に目を留めた。
 「…俺が決めてもいいか?」
 「何かいいものがありましたらお願いします」
 は自分では決めかねていたので、斉藤の申し出を有り難く受けた。
 「ではこれを頼む。色を灰色にしてもらおう」
 「へえ、おおせのとおりに」
 斉藤はひとつの紋を指差し、店の者に注文した。



 数日後、羽織が出来上がった。注文した時にいつ出来上がるのかを聞いておいたので、は呉服屋へ赴き受け取ってきた。
 お届けしますと店主は言ったが、ただで作ってもらった上に届けてもらうなど図々しいにもほどがある。 はそう思って店主を押し留め、羽織を受け取りに行った。

 前川邸に戻ると、斉藤が土方の部屋を訪れていた。
 「ただいま戻りました。斉藤さん、ありがとうございました。お蔭様で羽織を受け取ってきました」
 「よかったな」
 ふっと口元を緩めて斉藤が言う。
 「着てみたらどうだ」
 「あ、はい」
 斉藤に促され、は風呂敷を解いて羽織を取り出した。
 羽織ってみると黒い布地が長着と袴にしなやかに沿い、動きを損なうことがない。
 大きさ、形ともに絶妙な仕上がりで、漆黒の衣がの姿を際立たせている。
 「どうですか?」
 は二人の前に立ち、その姿を見せた。
 「…まあまあだな」
 「そうですな」
 本当はまあまあだとか適当な相槌どころではなかった。似合いすぎるほどに似合っている。こちらからは何も言わなかったが、 この羽織はかなりいい生地を使って作られているに違いない光沢がある。その艶めきがまたの肌の色に合っているのだ。

 「何だその紋、俺と同じ左三つ巴じゃねえのか」
 土方が羽織に描かれた紋に気がついた。白でなく灰色に染め抜いているのは、紋が目立たぬようにするためで少し見難かった。
 「え?」
 は自分では決められないので斉藤に任せたが、まさか土方と同じ紋を入れたのか。
 「いえ、違います」
 斉藤は立ち上がるとの羽織を脱がせ、土方に紋を見せた。
 「これは捻じ卍の丸と言って卍紋です。巴紋ではありません」
 土方はその紋をじっと見つめ、己の羽織の紋と比べた。
 「ほとんど変わりゃしねえじゃねえか」
 「本当です、ぱっと見ではわかりませんよ、これは」
 も土方の横に並んで紋を見比べた。共に尾を引くような、前の文様を追うその形は非常に似ている。
 「どちらも元は渦巻き模様が原型だからな。当然だろう」
 斉藤は平坦な口調で言った。

 「お揃いみたいですね」
 が何気なくそう言った。
 「なっ、こんな紋、どこにでもあらあ」
 土方はお揃いという言葉に反応してしまい、慌てて否定した。
 「何を慌てていらっしゃるのです」
 斉藤が目の奥をきらりと光らせた。
 「斉藤てめえ…わざとか?」
 斉藤の目に気がついて土方が眦を吊り上げ、小さく鋭い声で斉藤に言った。

 「渦巻き模様が原型なんですか…」
 は男二人の会話に気づかずに、自分と土方の羽織を並べて眺めていた。
 「ああ、元は昔の清国で蛇がとぐろを巻く姿とされて、それが転じて渦巻きになったらしい。軒先の屋根瓦を見たことがあるだろう。
あれの丸い瓦――軒丸瓦によく巴紋がついているが、巴の渦、要するに水だな、それによって火を防ぐまじないの意味があるのだ」
 斉藤も紋を見比べながら薀蓄を語る。
 「へえ、そうなんですか。斉藤さんっていろいろなことをご存知なんですね」
 先日ひったくりを捕まえたのも感心したが、こういった知識にも感心する。斉藤は出来た男なのだとは思った。

 は土方を見た。
 土方はその視線に気づいて彼女と目を合わせた。
 「何だよ」
 土方は斉藤に目の前で知識を語られて彼女がそれを褒めたのが面白くない。だが自分には斉藤に匹敵する薀蓄が何もなかった。
 「土方さんは巴紋みたいですね」
 「あ?」
 が突然訳のわからないことを言い出したので、土方は問い返した。

 「いえ、あの、巴紋って火を防ぐ役割があるのでしょう? 土方さんは浪士組にかかる“火”を防ごうと、芹沢さんたちの 後始末をしたり、組の中に常に目を光らせたりしてらっしゃるじゃないですか。何だか巴紋そのものだなって…」

 「…そうか?」
 「あ、変な例えでしたよね、すみません」
 土方がいい返事をしないのを見て、は顔の前で手を振ると居住まいを正した。
 だが本当は土方はまんざらでもない気持ちだ。
 斉藤は二人のやり取りを聞いて、ほう、と眉を上げた。
 「土方さんの副長としての仕事を褒めてるということか」
 「えっ、そんな褒めるなんておこがましいですよ。そうじゃなくて、ただそう思っただけで…」
 「よく見ているんだな」
 「だからそう言うわけじゃ…同じ部屋にいれば嫌でも」
 「あ? 何だとてめえ、嫌でもたあ何だ」
 「土方さん、そういう意味じゃないです」
 この後三人は、互いに揚げ足を取ったりからかったり突っ込んだり素直に否定したりと、不毛な問答を続けた。





 (斉藤の野郎…)
 土方は、斉藤が彼女に卍を選んだのは絶対にわざとで、自分をからかうためのネタにしたと思い、眉を寄せた。
 「何か私の羽織についてますか?」
 は土方が羽織に視線を縫いとめたまま動かないのを見て立ち上がり、羽織を確かめた。
 「いや、何もついてねえよ」
 はたと我に返り、土方は正座を崩して火鉢に手を当てた。
 「あ、ちょっと糸くずが…」
 は短いそれを摘んで、後で台所にある屑篭に捨てようと懐紙に包んだ。
 「寒いだろ、挨拶はもういい。お前も当たれ」
 土方は火鉢を指差して、近くに座るようを促した。
 「はい、ありがとうございます」
 もそれを受けて火鉢の傍に腰を下ろし、土方と同じように手をかざした。



 土方は後から調べて知ったのだが、卍は仏教と共に中国から日本にやって来たもので、仏陀の髪や手足に現れる吉祥、瑞祥の印なのである。
 そこまで斉藤が知っていて選んだかのは知らないが、そうだと思えば、思わぬ事例でこの時代に姿を現した彼女に卍の加護があるようにともとれる。
 それを彼女に教えてやってもいいが、斉藤と知識を張り合っているようで面白くない。
 「明日からまた頑張ってお勤めしますね」
 が口元を緩めて笑う。
 「まあ適当にしろ。俺は知らん」
 土方はちらりとを見て素っ気無く言った。
 はい、とは返事をして、寒いと白い息で呟きながら火鉢に向けた手をこすり合わせた。



 その体に纏う卍が、お前を守ってくれるように。
 神にも仏にも祈りゃあしないが、それぐらいはいいだろう。
 土方もまた白い息を吐きながら、火鉢の赤く燃える炭を眺めた。



 翌日の朝、ちらちらと雪が降る中をは今年初の黒谷へ出仕していった。
 雪はくるくると回転して降り、傘が届かぬの羽織へとくっついては落ちていった。

 卍巴と降る雪の。
 その言葉通り、雪は互いに相手方を追うように入り乱れて降る。
 この時、はまだ知らなかった。
 自分と土方の関係が、卍と巴のように入り乱れ、絡まるのを。



参考文献:
『卍の魔力、巴の呪力』家紋おもしろ語り 泡坂妻夫 新潮選書 2008年




 20090101 A happy new year.