久遠の空 ドリーム小説 2012年拍手文 六月 その2

お前への不満×20    10.ここまできてオアズケできるか

法眼は俺が立ち聞きしていたことには気づかず、
いろいろ頑張れよなどと言って屯所を去っていった。
近藤さんと俺と一緒に門まで見送ったお前は、法眼に笑顔を向けていた。
まったくいつもと変わらない、静かな視線で。


さっき法眼に見せた底知れぬ闇など、欠片も浮かべずに。


昼を迎え、向き合って座り、昼餉を食う。
「これ、おいしいですね」なんて、のほほんとした声で言いやがる。
自分には何の意味も価値もないなんて言った時の、
あの冷たい声はどこへやらだ。



その後も、お前は俺に言われた仕事を手伝ったり、
部屋に押しかけてくる迷惑な野郎どもの相手をしたり。
いたって、ごくごく、普通にしてやがる。
どうなってんだ。



夜になって床に入ったって、全然眠れやしねえ。
ただ寝返りを繰り返す。

お前も眠れないんだろう、
眠ったふりの息がわざとらしいんだよ。



俺は布団を跳ね上げ、素早くお前の寝床に滑り込んだ。



「…どうしたんですか?」
どうしたんですかじゃねえんだよ。
「眠れないんですか?」
眠れないのはお前だろ、ちくしょう。



腕の中にきつく閉じ込めれば、
耳元でお前が苦しそうにあえぐ。

「あの、っ… 苦しい、ん、ですけど…」

うるせえ。

「ほんとに、どう、したんですか…?」

お前のせいだ。
聞いてられねえんだよ。
意味がねえとか、価値がねえとか。
誰が決めたんだ、そんなの。



こんなに俺が惚れてるのに。



「…お前にやるよ」


「何をですか?」


すっとぼけやがって。
価値も意味も。
俺が与えてやる。




そう思った瞬間、
気付いたら唇を重ねていた。