七月:〜無自覚なふたりで七題 7. 告白履歴を告白します〜
「たまにはちょっとつき合えよ」
と、誘ってきたのは永倉と原田だった。
は汗をふきながら木屋町の南部宅から戻ってきたところだった。
今夜土方は近藤と一緒に守護職邸に召し出され、肥後守と話すと言っていたのを思い出す。
どこかに行くわけでもないし、ましてやこの部屋にいるのだから問題はないだろう。
「はい、喜んで」
は荷物を置くと台所へ行っった。そして自分たちの分の膳をもらってきて、ささやかな宴会に加わった。
かなり夜も更けた頃、土方は屯所に戻ってきた。
「部屋の主がいねえからって何してやがった」
やたらに酒臭い室内に、土方は顔をしかめる。
「原田さんと永倉さんと…話してました」
はふうとため息をつく。
「飲むなっつってんのに、この馬鹿野郎」
土方はの頭をぐいと押す。
「すみません…」
はあったことを話し始めた。
永倉と原田は酒を山ほど持って副長室に来た。
は飲まないようにしていたが、原田に勧められ、永倉に杯を持たされ、飲まざるを得なかった。
「なあ、お前と土方さんってどーなってんのよ?」
酔いで完全に座った原田の目がに向けられる。
「あ〜、あの衆道嫌いの土方さんがねえ、不思議だねえ」
永倉も酒の匂いをまき散らしながらに迫る。
「どうって…別にどうも…」
は答えながら杯を傾ける。
そう、どうもどころか、何もない。
ただ自分が片思いをしているだけ。土方が自分との衆道の仲を認めてくれているのは、自分が面倒に巻き込まれないための方便なのだ。
「どうもってこたあねえだろうよう」
原田がにべったりと寄りかかる。
「いったいお前、土方さんのどこがそんないいのよ? そもそもどっちからそういうことになったわけ? お兄さんたちにちょろっと話してみ?」
永倉たちは酒をだしに自分を構いにきてくれて、自分と話をしようとしてくれている。その気遣いが嬉しい。
たわいもない話は最高の肴なのもわかっている。
聞きたい聞かせろとだだをこね続ける原田と永倉に吹き出しそうになりながら、は口を開いた。
「で、何て答えたんだ?」
土方は眉間をもみほぐしながら聞く。
「えっと…私から土方さんに…打ち明けたことになってます…」
は酔いからくる眠気に目をこすりながら答える。
「厳しいけど…いつもちゃんと見ててくださるし…情に流されず…やるべきこと、を、なさっている姿が…とても…」
こくりと頭が下がり、は前に倒れそうになった。
それを土方の腕が支えた。
は土方の胸に抱き止められる。
「とても…何だ?」
土方が耳元で低く囁く。
「…とて、も…」
好きです、と。
確か永倉たちにはそう答えた気がする。
けれども、それを土方に伝えることができず、はことりと眠ってしまった。
伝えてしまえればどんなに楽だろう。
でも、伝えてしまえば今の関係を保つことはできない。
好きですと。
心の中でなら何度だって言っている。
それを表に現すことはもちろんないけれど。
あたたかい。
この温もりを失いたくない。
自分から告白したと嘘をつくのは、少し心苦しい気もするけれど、男同士の仲だと疑われるぐらいどうってことはない。
「土方さん…」
あなたの名前を呼ぶ、そのたびに。
それが、私の告白。
20110701
お題配布元:Fortune Fate様