選ばれざるもの 7
翌日、夜明けとともに近藤たちは大坂へと出立した。会津藩から要請が来ていた姫路藩主の警護のためである。
は黒谷への出仕があるので留守番になった。むしろ、ゆうべの様子からすると――自分がいない間のことは山南か井上に相談しろと
――「ついて来るな」といった感があった。
新見の葬儀の段取りなどは山南に任せ、局長である芹沢、近藤、副長の土方、副長助勤の中から平山、永倉、斉藤が選ばれた。
八木邸の前で集合した者たちを、大坂へと旅立つのを見送る。
は去り行く背中を見つめながら緊張感を高めた。
たった二日とは言え、自分の正体を知る二人が二人とも前川邸からいなくなってしまうのである。その間は何が何でも自分の身は自分で守らねばならない。
自分が前川邸にいる時に土方や斉藤が同じ屋根の下にいることがこんなにも心強いものだったとは、と改めては思った。
絶対に守る。
は無意識のうちに拳を握り締めた。
大坂へは淀川を舟で下った。
じりじりと残暑が照りつける太陽の下、川の上を冷やされた空気が滑ってゆく。
土方は舟の縁に手を掛けて、これからの計画を頭の中で反芻した。
失敗は許されない。
舳先の方に立って平山と二人でぼそぼそと会話をしている芹沢を見遣る。そうしていられるのも今のうちだと土方は心の中で呟いた。
水面に視線を落とす。
少しだけ彼女のことを考える。
置いていきたくはなかったが、連れてくるわけにもいかなかった。
計画のために。
せめて斉藤を身の安全のために置いてくるべきだったのかもしれない。
が、こちらの計画にも斉藤が必要だった。
いや、斉藤がいなくてはならない理由があった。
会津藩にこの計画を知らせた時に、目付け役として斉藤を同行させることを告げられたのだ。
初めに芹沢を排除せよと言われてからかなりの時間が経つ。合間に政変だの見回りだのがあったのは会津藩も承知しているが、
いい加減痺れを切らしてきたのも土方は感じていた。
だから今回は斉藤を連れてきて、沖田は屯所の守りに置いてきた。
土方は、沖田もなんとなくのことを気にかけているのをわかっていた。何かあればきっと守ってくれるだろうと踏んでいる。
この大坂で。
芹沢を。
土方は、突き抜けるような青い空を見上げた。
船は無事に目的地に到着した。大坂、大川にかかる天満橋を臨む八軒宿なる地域の、京屋と言う宿屋。そこに新選組は荷を解いた。
以前大坂に出張したときもここを使い、今回も世話になることにした。
すぐに会津藩の担当者と合流し、道中の警護に当たった。
距離は雅楽頭が大阪城に入るまで僅かな間だったが、その前後にいつどのように誰が伏しているかわからない。建物の影、人ごみの中、樹木の向こう。
全てに充分な気を配りながら、新選組は役目を果たした。
京屋に戻ったのは夕方になってからだった。
それぞれが風呂を浴びてさっぱりしたところで近藤が切り出した。
「芹沢さん、実は会津藩のご好意で一席設けてあるのですが、いかがです?」
「あ?ああ・・・」
新見が死んで沈む暇もなく大坂に来てしまった。役目が終わり、やっと芹沢は仲間を失った悲しみに浸っているところだった。
「新見さんがあんなことになってしまって、芹沢さんのお気持ちお察しします。少しでも気が休まれば・・・」
近藤は芹沢の目を覗き込むようにして語りかけた。
「わしは・・・後で行くことにする。近藤氏たちは先に行っててくれ」
警護で疲れたしなと芹沢は言うと、ごろりと横になった。
「しかし芹沢さん、会津公のご好意ですから」
近藤は芹沢の肩を掴んだ。
「では私も残りましょう」
と、今日大坂に来た面子の中で唯一の芹沢派である平山が横から口を出した。
「いや、誰もおらんで結構。平山、お主も先に行け」
芹沢は面倒くさそうにひらひらと手を振った。
「しかし先生」
「いいから行け」
食い下がる平山に芹沢はもう一度手を振った。
「芹沢さんもああ言ってることだし、いいじゃねえか」
と永倉が言った。
「だが・・・」
土方は計画を頭の中でさらった。芹沢は必ず連れて行かねばならない。
「俺が後で抜けてくるから、とりあえず吉田屋に行こうぜ」
永倉は土方にそう囁いた。
土方は芹沢に目を移した。畳の上に転がり、うとうととし始めている。
少しの間なら、芹沢が寝ている間なら一人にしても大丈夫だろう。土方はそう判断し、皆と共に新町の吉田屋へと赴いた。
吉田屋では豪華な膳が設えられ、芸妓も見目形はもちろんのこと、教養も一流の者ばかりが揃えられていた。
全ては芹沢をここで酔わせるためだった。
前後不覚になるまで飲ませて、京屋へ帰る道の途中で。
しかし芹沢が来なければ計画は始まらない。
何も知らない芸妓たちと一献交わし、一通り芸の披露があった。
「土方さん、そろそろ行って来らあ」
永倉が頃合を見計らって土方の席へとやって来た。
「一人で大丈夫か?何なら斉藤を」
土方は隣に座って酌をする妓に聞こえないように、反対側を向いてぼそぼそと小声で返事をした。
「いや、俺一人で充分だ。連れて来るだけだからな」
「わかった」
永倉はにっと笑って自分の敵娼に厠に行くと告げて席を辞し、吉田屋を出て行った。
永倉は京屋へ戻った。
ひと足ごとにきしむ階段を上り、芹沢が寝ている部屋へ入った。
「おお、永倉ではないか。早かったな」
芹沢はすでに起きていた。
「・・・なンだ芹沢さん、起きたんなら吉田屋へ来てくれればよかったのに。皆、芹沢さんが来るのを待ってますよ」
起こす気でいた永倉は意表を突かれたが、手間が省けたなと思った。
「迎えに来たんスよ。吉田屋へ行きましょう」
永倉は芹沢に手を差し伸べた。
「いや、今から小間物屋が来るんでな。留守にできんのじゃ」
芹沢は永倉を見上げてにこにこと笑った。
「・・・小間物屋?」
「そうじゃ、お梅に買い物を頼まれていたのを忘れておってのう」
お梅が芹沢の元に来てから様々な物を無心していることは前述した。着物もかなりの数を誂え、それに伴い装身具も集めている。
芹沢が今回大坂に出張することを聞かされたお梅は、行くこと自体には何も興味を示さなかった。しかし先日購入したばかりの螺鈿の櫛を眺めながら、
大坂で何か珍しい櫛や簪などを買ってくるように頼んでいたのである。
新見の死が芹沢の心を塞いでいたが、その合間にふとお梅の顔が浮かんできた。そしてお梅の頼みごとを思い出した。
もう見世の時間は終わっていたが、芹沢は京屋の主人に無理を言い、先ほど小間物屋をここへ寄越すよう取り計らわせたのであった。
「その小間物屋、吉田屋へ呼べばいいじゃないスか。行きましょうや」
もし小間物屋が京屋へ来たら吉田屋へ回してもらうようにすればいい。とにかく永倉は芹沢を連れて行くことを考えた。
「いや、わしは宴席はいらん」
芹沢は、お梅を得てから外で飲み食いすることは減ってきていた。余程お梅に惚れ込んでいるらしい。今日も宴席に出るより、ゆっくりとお梅への
土産物を物色したいと思ったのだ。
「でも局長がいないってえのはハクがつかねえっスよ」
「近藤氏がおるではないか。それでよかろう」
局長という部分を永倉は強調したが、芹沢には効かなかった。それほどまでに、この男はお梅に入れ込んでいるのだ。
「・・・仕方ないっすね、じゃあ小間物屋が来て買い物が済んだら顔だけ出してくれませんか。俺も芹沢さんを連れて来る手前ってもんが」
「わかったわかった」
永倉の妥協案を、実に面倒そうではあったが芹沢は軽く手を振って飲み込んだ。
永倉はすぐに連れて行くことは諦め、時を待つことにした。吉田屋では土方たちが待っている。何としても連れて行かねばならない。
それからややあって、小間物屋が部屋にやって来た。
「遅い時分に失礼します」
そう挨拶をしながら入ってきたのは、小間物屋の女将だった。
「芹沢先生、でおますな。小間物屋を営んでおります、鹿でございます」
女将は名乗って三つ指をついた。その横には下女らしき女が同じように頭を下げている。
「お時間は過ぎておりましたが、京屋はんのたっての願いということで、特別に参りました」
いかにも嫌味たっぷりに女将は口上を述べた。
「挨拶はよい。それよりも品物を見せよ」
だが芹沢は一向に気にせず、すぐに商品を広げるように言った。
持ってきた品物は京都の趣とは別のもので、芹沢はお梅の顔や持っている着物、小間物などを思い浮かべながらあれこれと選んだ。
最初は理不尽な呼びつけに苛立っていた女将も、芹沢が景気よく買い物をし、かつその場で現金払いをしてくれたことに満足した。
「ほな、これで」
女将は下女に金の包みを持たせると、深々と頭を下げた。
はじめは嫌々だったが、いい客だったと女将は畳を眺めながらほくそ笑んだ。
「ん?」
芹沢は女将の頭に目を留めた。
「・・・?」
永倉はそれまで部屋の隅にもたれかかって芹沢の様子を眺めていたが、ふと空気が変わったのを感じて背筋を伸ばした。
「お主のその櫛、いかがいたした」
芹沢は女将の結い上げた髪に刺さって光る櫛に注目した。
「へえ、これは嫁ぐ際に実家の父から送られたものですわ」
そっと櫛に触れ、女将は答えた。
その櫛は頂点が高く湾曲し、黒い漆塗りの下地に薊が描かれている蒔絵のものだった。地味ではあるが、漆黒の上に金が蒔かれて美しい光沢を放っている。
黒い髪にそれがとてもよく映えている。きっとお梅に似合うに違いないと芹沢は思った。
「それも寄越せ」
と芹沢は言い、女将の頭に手を伸ばした。
「これはあきまへん」
女将はその手を払った。女将にとってこの櫛は実家からの大切な贈り物である。渡せるわけがない。
「気に入った。金は幾らでも出す。それも渡せ」
芹沢はむっとしてさらに手を突き出してきた。
「これだけは堪忍どす」
幾ら金を積まれてもこれだけは渡せない。女将はきっぱりと突っぱねた。
「芹沢さん」
永倉は腰を上げて止めに入った。
「女将がダメだっつってるじゃないスか。もうこれだけ買ったんだからいいでしょう」
畳の上に広げられた風呂敷には、買った小間物が所狭しと並べられていた。
「ではこれは全部いらん!」
芹沢は風呂敷を蹴散らした。何本もの細工物が畳の上を転がる。
「あっ、何を」
もう相手の手に渡ったとはいえ、自分の見世から出した品物である。女将は思わず声を上げた。
「これを全部返すからその櫛を寄越すのじゃ!」
芹沢は素早く立ち上がって女将に掴みかかった。
「女将はんに何を!」
それまでおとなしく後ろに控えていた下女が芹沢の腕にしがみついた。
「ええい、邪魔だ!」
芹沢は下女を乱暴に振り払った。下女は畳にばたりと倒れ伏した。
「芹沢さん!よさねえか!」
さすがに永倉も大声を出した。たかが櫛一枚でこんなことをする必要はないはずだ。
「さっき買ったのをお梅さんに渡せばきっと喜んでくれますって。だから・・・」
これ以上のことはよしましょうや、と言いながら永倉は芹沢の肩を掴んだ。
「貴様も邪魔立てするか!」
かっとなった芹沢は懐から鉄扇を取り出すと永倉を力任せに突いた。
「ぐっ!」
それが肩に当たり、永倉も畳に膝をついた。
「寄越せ!」
芹沢は女将の頭に手をやり、むしりとるように櫛を奪った。
「いやあ、それだけは堪忍や!持ってきたもん全部ただでええですから、それだけは!」
女将は泣きながら芹沢に抱きついた。
「これだけあればもうよい!」
芹沢は鉄扇を投げ捨ててもう一度懐に手をやると財布を取り出した。
「これを持ってもう帰れ!」
そして財布を女将の顔めがけて投げつけた。
「あっ!」
それは見事に女将の頬に当たった。
がしゃりと音がして財布が落ちる。
「か、返してえ・・・!」
女将はすっかり崩れた髪を振り乱して芹沢に手を伸ばした。
「女将さん、諦めるんだ」
突かれた肩の痛みを堪え、永倉は女将を制した。
「でも!あれは!」
女将は必死の形相で永倉を睨みつけた。
「芹沢さんの手に渡ってしまった以上、もうどうすることもできない。悪いが今日はこれで帰ってくれ」
永倉は無念の表情で女将に芹沢の財布を握らせた。そして自分の懐からも財布を取り出し、芹沢の財布の上に重ねた。
芹沢の恐ろしさに泣きじゃくる下女を支えて立ち上がらせると、永倉は畳の上に散らばった櫛や簪を拾い、風呂敷に包んで持たせた。
「止められなくてすまん。これ以上のことになる前にもう帰るんだ・・・」
肩がじんじんと痛みを増していくのがわかる。もし女将が食い下がって芹沢を怒りの頂点にでも導いてしまったら自分一人で止めきれるかわからない。
そうなる前に女将たちを帰さねばならないと永倉は思った。
その頃、永倉たちが来るのが遅いと思った土方は斉藤を京屋へ向かわせていた。
京屋についた斉藤は二階へ上がろうとした。
女二人が乱れた髪で泣きながら階段を駆け下りてきた。
斉藤の肩にどんとぶつかっても謝りもせずに。
いやな予感が斉藤の脳裏を掠めた。
「永倉さん」
斉藤は早足で階段を上ると芹沢に宛がわれた部屋へ入った。
「・・・斉藤」
永倉は右肩を抑えて壁にもたれかかっていた。
「どうしたんだ」
斉藤は永倉の様子を見てぴくりと眉を動かした。
「すまねえ斉藤・・・」
永倉は謝罪の言葉だけを口にした。
斉藤は部屋の中を見回した。
永倉のいる方とは逆の片隅で芹沢は座っていた。酒を飲みながら、女将から奪い取った櫛を愛しそうに眺めていた。
「見せてみろ」
斉藤は永倉が押さえている肩を見ようと、着物を脱がせた。鉄扇で突かれたそこは赤黒く腫れ上がっていた。
斉藤は京屋の主人に申し付けて、手拭いと水の入った桶を用意させた。
手拭いを濡らして永倉の傷にそれを当てる。何度かそれを取り替える間に、永倉は小声で斉藤に事の次第を話した。
「そうか。災難だったな」
斉藤はぼそりと言った。
「情けねえぜ」
永倉は自嘲した。
「仕方あるまい」
斉藤はまたぼそりと呟いた。
「おいお前ら、何やってんだ」
とうとう待つのに痺れを切らしたらしい土方が、自ら京屋へやって来た。
「土方さん」
永倉がその姿を見て、痛みを我慢して立ち上がろうとする。
「・・・どうしたそれ」
土方は永倉が肩を押さえているのを見て問う。
斉藤が黙って頷いた。
土方は何かがあったのを察知し、芹沢の姿を探した。
天井からの明かりと行灯に照らされて、部屋の隅の壁に芹沢の影が浮かぶ。
土方にはその影が、いつになく黒く感じられた。
一方、壬生でも動きがあった。
土方たちを見送った後、は黒谷へと出仕し、通常通りの時間に帰宅した。
障子に手を掛ける。
今日はこの向こうに出迎えてくれる顔がないのだとは思った。少し寂しい気がする。
するりと障子を開けた。
「・・・?」
空気が。
違う様な気がする。
は一瞬、部屋に入るのをためらった。
だが入らないわけにもいかないので、すっと足を踏み入れた。
物の置いてある場所は変わりないと思う。が、何か違和感があるような気がした。
自分と土方以外の人間が、誰もこの部屋にいない間に出入りすることはあまりない。どちらかがいればそれなりに人は来るのだが。
はっとしては納戸を開けた。そして自分の荷物を確かめた。行李の蓋が自分ではない誰かに開けられたような感じがする。
は慌てて中身を取り出した。着物や足袋などこの時代で使うものはどれだけなくなっても構わない。しかし、元の時代から持ってきたものを誰かに持ち去られでもしたら・・・。
無事だった。
元の時代の衣服も携帯電話も。
ふーっと安堵の溜息が口から吐き出された。
「?」
薄い闇の中で、は携帯がどことなく違うように見えた。
よく見ると、携帯につけていたストラップが変わっている。
何だろう、この梅の枝の意匠は。
は首を傾げた。
念のため、もう一度荷物をよくよく調べた。が、携帯のストラップ以外の異常は見当たらなかった。
誰かがこの携帯に手を触れ、ストラップを交換したことだけは明らかだ。
誰かがこれについて何か言ってきたら気をつけねばなるまい。
土方が帰ってきたら真っ先に相談しようとは思った。
その夜。
は携帯を懐に隠して横になった。
土方がいない夜を過ごすことはある。彼が島原などに遊びに行ってしまう時はそうだ。
いつもならまったく平気なのだが、今夜は室内の異常に気がついてしまったせいか、いやに心細い。山南か井上に言って、どちらか近藤の部屋で
寝てもらえばよかったとは思った。
庭から虫の鳴く声が途切れずに続いている。
暑さのピークは過ぎたものの、まだまだ夜も暑い。
余計に眠れず、は寝返りを打った。
その時、廊下に気配を感じた。
音を立てないように振り返ると、障子の向こうに薄く黒い影が写っていた。
誰だろう。
「・・・島田さん?」
は、夜更けに訪ねてくる隊士の中で最も確率が高い者の名前を放った。
すると、影はびくりと震える様子を障子に映してすぐに消えた。
は素早く身を起こして障子を開いた。が、そこにはもう誰もいなかった。
どくりと心臓が音を立てて拍動する。
誰かがこの部屋を狙っている。
の頬を、冷たい汗が一滴伝い落ちていった。
は身支度を整えると、腰に二本を差した。
こんなに夜遅くに山南や井上を起こしに行くのはさすがに気が引けた。
とあらば、自分で自分の身を守るしかないのである。
足が痺れて使い物にならないように注意しながら座り、障子に目を向けた。
どれだけ時が過ぎたかはわからないが、空が白んできた。
幸いなことに今夜はこれ以上何も起こらなかった。
「おはようございます、さん」
と沖田が障子を開けて笑顔を見せた時の、何とほっとしたことか。
は一気に緊張を解いて、沖田に朝の挨拶をした。
朝食が済んだ後、はまず山南の元を訪れた。
自分が昨日帰ってきた時に室内に違和感があったこと、深夜に誰かが部屋の外にいたことを話した。
「では今日は近藤さんたちが帰ってくるまで、ずっと私が近藤さんの部屋にいることにしよう」
山南が言った。昨日は夕方になるとすぐに自室へ戻ってしまったが、今日はの報告を受けてそうすることにした。
「お願いします」
は手をついて頭を下げた。
井上へも報告が終わると、は黒谷へと赴いた。
今日は土方たちが帰ってくる。事を報告して対処してもらえる。
自分で解決できないのは口惜しいが、今のところ一人でどうこうできるわけでもない。相談するのが最善だ。
は途中何事もなく無事に黒谷の巨大な三門をくぐれたことにほっとしつつ、気を引き締めた。
20080717